日本という特殊環境下で国際分散投資をするための小ネタ
長期投資をするのであれば国際分散投資で安全に進めたいものですが、外貨建て資産を買えば簡単に済むかと言えば、そうでもありません。ここでは、日本特有の相場環境とこれに対処するための方法について考えます。
目次
日本はおかしな国
金融危機が起こると円が買われます。円が買われるので外国株式・債券の円建て評価額が下がります。円建て評価額が下がるので日本人は損します。このような流れが常態化していることにより、インデックスファンドやETFで国際分散投資をしている長期投資家はしばしば大きく資産を減らしてしまいます。
外貨建て資産の損益の6割は為替差損益によるものだとも言われており、日本人が日本から海外へ投資すると、円高株安債券安の三重苦に見舞われることが多々あります。
為替リスクと価格変動リスクを分離する
国際分散投資は基本的に超長期のバイアンドホールド戦略となりますから、外国株式ETFや外国債券ETFをホールドしている人が多いと思います。
外国株式ETFや外国債券ETFには、為替ヘッジありのタイプと為替ヘッジなしのタイプがあります。為替ヘッジなしの方を選ぶ方が多いようですが、円高株安債券安の三重苦を回避するためには、為替ヘッジをすることが効果的です。
ただし、これではすべての資産が円建てになってしまい、カントリーリスクの分散になりません。ここで、カントリーリスクを分散する役割をFX(外国為替証拠金取引)に持たせることを考えます。
FXはレバレッジを掛けることができるので、ポートフォリオの現金部分の一部を証拠金としてポートフォリオ全体を任意の通貨に分散させることができます。
為替ヘッジ付ETFとFXで完璧に近い分散ポートフォリオを作る
株と債券については、途中でノーセルリバランスを行うことも考慮して、ほどほどに分配金が期待できるETFを組み入れます。これらのETFは、いずれも単一の通貨でヘッジされているものを採用します。日本人が日本で投資するのであれば、円ヘッジ型が便利です。日本国債については、割高感があるので、本当はいけないことですが、今回は除外します。
さらに、ブラックマンデーやリーマンショックのような金融危機における最後の砦として純金も保有しておきたいので、国内現物保管型の純金ETFも組み入れます。
具体例
債券
株式
純金
- 1540 純金上場信託
通貨
- 日本円
- FX: USD/JPY及びEUR/JPYをロング。資産全体がUSD:EUR:JPY=5:4:1となるように、レバレッジを利用してポジションを建てる。日米欧の三通貨あれば大雑把な通貨分散として十分だと思われる。
債券/株式/純金/通貨の比率は自分の許容リスクと好みに応じて適宜定めます。私は、債券:株式:純金:通貨=1:1:1:1とする所謂恒久ポートフォリオが好きです。
為替ヘッジ付ETFとFXを組み合わせるメリット
債券・株式・純金は円ベースで単純比較できる
債券、株式、及び純金のETFの時価は日々円建てで評価されます。このため、円高・円安の影響を受けずに各資産を評価できます。ポートフォリオのリバランスにおいて、今円安であるか円高であるかを気にすることなくETFの売買をすることができます。
通貨分散比率はFXのポジション調整で細かく行うことができる
FXの方は、ポートフォリオの為替リスクを分散するために適宜リバランスすることができます。債券や株の高い安いとFXのポジション調整は無関係に行えます。
ポートフォリオ全体の資産評価を純金ベースで行うとカントリーリスクのない評価ができる
どの国の通貨であっても、カントリーリスクを無視することはできません。この観点から、日々の資産の評価において、カントリーリスクのない評価軸を利用することが考えられます。一例としては、純金を評価の軸にすることができます。
具体的には、各資産の評価額を純金の重量(グラムでもトロイオンスでも構いません)に換算します。円建てでの評価も重要ですが、円建てだけでは日本円のカントリーリスクを見失いがちなので、「総資産は純金換算で何キロ」というような見方ができるようにしておきます。
まとめ
ETFとFXを適切に組み合わせることによって、国際分散投資における価格変動リスクと為替リスクを個人レベルでもうまく分離してポートフォリオを組むことができそうです。