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ガラスペン

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持ち物は少なければ少ないほどよいと思っている私ですが、実はガラスペンを2本持っています。実用的な面で言えばボールペンの圧勝ですが、ガラスペンに関して言えば、「持っていてよかった」と言えます。

目次

 

ガラスペンって何?

ガラスペンとは、インクをペン先に浸して書く所謂つけペンの一種で、(少なくともペン先が)ガラスでできている筆記具です。ボールペンや万年筆などとは異なる書き味と、ガラスならではの美しさがあり、書くことそのものが楽しくなるペンです。

ガラスペンの良いところ

ガラスペンは、ペン先がガラス製であるがゆえに、他のつけペンとは異なる特徴を持っています。

どんなインクでも使えます

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左から"プラチナ古典ブルーブラック", "パイロット色雫(紫式部,竹林,秋桜)", "モンブラン染料系黒"

どのメーカーのインクでも使える

ボールペンや万年筆は、基本的にはメーカー指定のインクを使用する必要があります。万年筆に関して言えば、どのメーカーも自社インク以外をいれることをお勧めしていません。これに対して、ガラスペンは、基本的にメーカー指定のインクがありません。つまりどのメーカーのインクを使用しても、ガラス製のペン先を傷めることがありません。

ペン先の腐食を気にすることなく古典インクが使える

ペン先を傷めやすいインクとして、酸性の古典インクがあります。昔のブルーブラックのインクは、万年筆のような金属製のペン先に接触させるとペン先を腐食させてしまうというデメリットがあります。ガラスペンのペン先はガラス製ですから、酸に対して非常に強く、腐食とは無縁です。

筆圧がいらない

ボールペンよりもさらさらと書ける

ボールペンの場合、ペン先のボールを転がす必要があるので、ペン先を紙に押し付けて書くことになります。ボールペンで文字を書くと下の紙に筆圧で跡が残ることがありますが、それくらいの筆圧が必要になります。これに対してガラスペンは、ペン先が紙に触れた時点でインクが紙へと流れてゆくので、まったく筆圧をかける必要がありません。筆圧をかけることで手が疲れるかどうかという実用的な観点で見れば大した差ではないかもしれませんが、ボールペンで字を書くときよりも、ガラスペンで字を書くときのほうがふわっとした気持ちで書けます。

万年筆よりもさらさらと書ける

万年筆はボールペンよりも軽い書き味ですが、日本で好まれる細字のペン先だと、どうしても筆圧が必要になります。ガラスペンの場合、太字でも細字でも筆圧はまったく必要ありません。ペン先を滑らせてインクを紙に置いてくるような書き味は、ガラスペンでしか味わえないものです。

圧倒的なインクフロー

ガラスペンのペン先は、ガラスの表面にインクが付着する力だけでインクを保持しており、万年筆のような微細な流路がありません。このため、ガラスペンは圧倒的なインクフローを誇ります。ガラスペンで文字を書くと、インクが紙の上でわずかに盛り上がるような形になるほどにインクが乗ります。これがそのまま乾くと、万年筆で書いた時とはまた異なるくっきりとした線になります。インクの硬さによってインクの染み込み具合が変わるので、いろいろなインクを試してみると面白いです。若干にじみ気味でやわらかい感じにもできますし、くっきりかっちりとした感じにもできます。

メンテナンスは意外と楽ちん

ペン先についたインクを水かぬるま湯で洗い流すだけ

ガラスペンのペン先は、インクを保持する溝があるだけですから、「インクが詰まる」なんてことがありません。ガラスペンを使い終わったあとに流水ですすいでティシュで余分な水を吸い取るだけでメンテナンス完了です。ガラスペンには洗浄が難しい微細なインク流路がありませんから、いろいろな色のインクを使って書きたい人にとっては、万年筆よりも色変えが楽です。

ペン先のインクが乾燥してしまっても大丈夫

ガラスペンのペン先は、インクを保持するための溝があるだけの単純な構造です。このため、万年筆とは異なり、「分解清掃」という概念がありません。このため、ぬるま湯でインクを溶かしつつガラスペンのペン先をティッシュで軽く拭くことで、ペン先に付着した乾いたインクを完全に取り除くことができます。万年筆の内部でインクをがっちり乾燥させてしまうと大変なことになりますが、ガラスペンであればそんな時でも簡単に復活させることができます。

気を付けるべきところ

破損

ガラスペンがガラスでできている以上、破損とは無縁ではありません。また、破損した場合、修復は困難です。ペン先の先端のほんの一部が欠けただけでも、そのペンの寿命はおしまいです。「ガラスを持っている」と意識して使用していればめったに破損しないのですが、インクをペン先につけるときと、ペンを置くときにペン先をぶつけやすいので注意が必要です。

同じものは2つとない

ガラスペンは、文字を書くための実用品であると同時に、手作業の工程が多い工芸品でもあります。このため、個体差があります。

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同じ型番でもデザインがわずかに違う

上の写真の二本のガラスペンは、同じ型番の色違いです。全体の長さ、太さ、ペン先の大きさなど、同じ型番であるにも関わらず、すべて違います。ガラスのひねりやペン先の取り付けなど、熱したガラスを職人さんが手作業で加工したものですから、このようなデザイン上の差が生じます。

同じ型番でもペン先の太さがわずか(とは言えないくらい)違う

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ガラスペンは、デザインだけでなく実用的な面でも個体差があります。上の写真を見てもらうと明らかですが、同じ型番のガラスペンであっても、ペン先のサイズが違います。写真の上側のガラスペンは太字、下側のガラスペンは細字ですが、同じ型番です。

同じ型番でも書き味がサラサラだったりカリカリだったり

ガラスペンの書き味は、ペン先の微細な形状で決まります。同じ型番のガラスペンをいくつか試してみましたが、引っ掛かりなくヌルヌルした感じで書ける個体や、「ガラスですよ!」と主張するカリカリ感のある個体、万年筆に近いサラサラした書き味の個体など、個性が強いです。

ガラスペンを買うなら販売店(実店舗)へ行った方がよい

個体差が大きいので試し書きは必須

ガラスペンはとても個体差が大きいものです。そして、文字を書くときに、その書き味やペンのデザインは大切な要素です。なのでガラスペンを購入する際には、実際にお店に出向いて試し書きをしてみることをお勧めします。お勧めというよりはむしろ試し書きせずに買うのはあり得ないというべきでしょうか。通販で買うと「コレジャナイ」感を感じる可能性が高いです。

実際に購入する一本を試し書きで選ぶ

家電製品などでは、「店舗で試してネットで買う」なんてことが多いですが、ガラスペンの場合、店舗で試してネットで買うと、間違いなく安物買いの銭失いになります。また、店舗でも、「自由に試し書きして良いですよ」という感じで陳列してあるガラスペンは、そのほとんどがペン先に破損があり、実際に感じる書き味とはかけ離れています。このため、本当に満足できる一本を手に入れるためには、販売用にストックしてあるペンをいくつか出してもらって、それで試し書きをさせてもらう必要があります。自分の好みに合った一本を選び出すために時間を割いて店頭に出向くだけの価値があります。

私がガラスペンを買った店は

この2本のガラスペンはいずれも銀座伊東屋で購入しました。伊東屋では複数のガラスペンを在庫から出していただき、デザイン・ペン先の太さ・書き味を試したうえで気に入った物を選ぶことができました。お店の方も、ガラスペンには個体差があることをよく知っていらっしゃいます。破損しやすいガラス製品なのに快く試し書きをさせていただけたことに感謝です。